総評/課題名「読書好きの高校教師の家を設計してください」

    審査委員長 伊藤 寛


 
「読書好きの高校教師の家」は、高校生の身近な存在である教師と話し合い、卒業後に訪問したくなるような家を求める課題でした。また、活字離れや電子図書の登場という時代において、本の魅力を再考してほしいという願いが込められていました。
今回は、全国の49高等学校から325作品という過去2番目に多い応募があり、審査のポイントは次の点としました。

1)大切な本を整理整頓できる書棚の計画
2)魅力ある読書空間の創出
3)料理好きの奥さんの台所と大勢の人が食事を楽しむ場の計画
4)卒業生が訪れたくなる仕掛けや工夫
5)定年後の夫婦の体力や余力への配慮

これらを中心に提案内容を吟味しましたが、今年は群を抜く作品が見あたらず接戦となりました。最終的な評価の中心となったのは、読書好きの教師と料理好きの奥さんが定年後に充実した時を過ごすことができるかということでした。
学期末試験や学園祭の準備等の中で奮闘した高校生諸君に拍手を送るとともに、指導してくださいました先生方に心より感謝申し上げます。














 
最優秀賞





 
長谷川 歩

「森の中の小さな文学館 〜夢開くみんなが集まる小さな図書館〜」

北海道札幌工業高等学校建築科3年

  


 
講評 最優秀賞/
森の中の小さな文学館 〜夢開くみんなが集まる小さな図書館〜

 地上に広がるハーブ、1mほど持ち上げられたデッキ、緩やかにカーブした屋根の構成が素晴らしく、なかでも本を開いたイメージを象った屋根とその支柱が美しい。デッキでは、建物や本箱を背に周囲へ向かう読書スペースがとても気持ち良さそうです。住宅部分はコンパクトな平屋建てにまとめられ、定年後の家としては十分でしょう。読書の楽しみ、ハーブ栽培と料理、そして食事と、さまざまな生活や交流を育む日常の緩やかな時の流れが予感でき、図面表現も美しく多くの審査員から支持されました。








学生審査員と教員、OBによる審査風景














優秀賞



優秀賞


鎌田 賢人

「 今日はどこで読もうかな 」

青森県立青森工業高等学校
建築科3年




講評

 ゆったりとS字型にうねった書庫棟が敷地を私的な空間と公的な空間に分け、読書スペースもそれに合わせて用意され、各所に優れた提案が見られます。書庫棟の本棚を直射光から守る配慮や蔵書量、至る所に考えられた読書スペースは、読書好きの教師にとって至福の空間といえるでしょう。分棟型の魅力が活かされていますが、老後の生活としての使いやすさや将来的にこの建物を維持する視点、建物の表情が都市的過ぎる点などに疑問を残りました。






優秀賞



片山 瑛斗

Be connected
   〜ハーブと本と、時々、市場〜」

静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科3年




講評

 敷地目一杯に建物が展開し、いつも地域の人たちで賑わっている様子がうかがえる作品。西側に想定した公園へのアクセスとなる敷地内通路は、お祭りの縁日のような空間となり魅力的です。その一方で飲食スペースや読書デッキが周囲にも向かい、多様な空間が用意されています。食事を提供するキッチンブースは出店の入れ替わりも可能なサイズで、教師夫婦の住まいもコンパクトにまとめられていますが、読書空間の魅力がもう少し欲しいところです。








道都大学OB賞


 道都大学OB賞 審査員

 君 興治 (株式会社アトリエキミ代表 一級建築士)

1998 道都大学美術学部建築学科卒業
   倉本たつひこ建築計画室など数社の設計事務所勤務
2001 君工務所設計所員
2004 日本建築学会所属
2005 日本建築家協会所属
2007 株式会社アトリエキミ設立
2008 北海道芸術デザイン専門学校常勤講師
2009 東北建築学会作品賞受賞

  


 道都大学OB賞


小林 奈友美

Ai no Su
    〜ハニカム構造で本を魅せる」

群馬県立高崎工業高等学校建築科2年




講評

 本棚が建物の躯体の一部となるこの作品は、空間と空間をつなぐ部分に本という媒介を使ったハニカム躯体があり、設計者が考えている光の透過以上に、視線、気配、人と人の接点が建物の構造から表現されているという点を高く評価しました。高校教師、そこを訪ねる教え子や近隣の人の距離や密接度が、一体の空間でありながら、会話のグループがいくつも成り立つように設計されており、そこが今回の課題の内容を的確にとらえているように思いました。









学生審査員賞



 学生審査員賞


久保田 祐基

「本和香(ほんわか)」

群馬県立桐生工業高等学校建築科3年




講評

 本とハーブの香りの和に囲まれるというタイトルのように、分棟の配置やデッキと屋根のかたち、図面にちりばめられたイラストにその雰囲気が漂う微笑ましい作品です。各棟には十分な本棚が壁体として設けられ、読書や休息の室は窓が効果的に開けられ、みんなが集まる部屋は大きな開口部がウッドデッキに向かうなど、よく考えられています。ただ、立面表現が箱型となってしまい、タイトルやイラストに比べ堅いイメージとなったことが残念です。





 学生審査員賞


森  亮太

The environment home」

静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科2年




講評

 化学を担当していた教師は、環境問題に深い関心をもっており、断熱効果の高いストローベイルを用いた家を計画。ストローベイルの調湿性は本にも良く、本を大切にする教師の気持ちが反映されています。また、家の周りに設けられた畑で野菜づくりに勤しみ、ハーブが絡んだパーゴラの下で卒業生や近隣の人たちと食事を楽しむ様子が目に浮かびます。夫婦の寝室と広いリビング・ダイニングが土間で分けられ、空間構成の明快さも魅力です。



 学生審査員賞


尾崎 純平

「本の道 
  〜住宅と図書で生まれるつながり〜」

静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科3年




講評

 東西と南北に交差する通路の四方に各室が機能的に展開し、ハーブ畑が切り込まれるという明快な平面計画に上手さを感じます。構造体となる壁状の本棚の位置もバランス良く配され、どこの空間も本に囲まれ、四方の各部屋は周囲の自然に向かい開放感にあふれ、読書好きの教師にとってはたまらない佇まいとなることでしょう。将来はこの地域の図書館や地区センターとして開放されることも予想され、地域の交流拠点としての魅力がいっぱいです。










佳 作


福田 奎也

「It reads and tells 〜本からつながる家〜」 

埼玉県立春日部工業高等学校建築科3年
安藤 大祐

「春夏秋冬 〜自然が繋ぐ趣味の空間〜」

東京都立工芸高等学校インテリア科2年


講評

 夫婦の住まい、図書館と読み聞かせの場、料理教室と食事テラスの3つの建物に囲まれたコミュニティ広場に、国語教師の馴染みの道具であった黒板を置いたところがポイント。黒板は子どもや近隣の大人にとっても懐かしい道具であり、ここのシンボルとなることでしょう。夫婦の住まいはコンパクトにまとめられ、落ち着いた生活が確保されそうですが、教師が本を楽しむ場をもう少し考えた方が良かったでしょう。

 


講評

 敷地の北西に池を設け、背後に広がる自然の四季の変化を水面に映し出されるという情景が表現されています。ダイニングとリビングを繋ぐ廊下は湾曲しており、視線を調整するとともに、窓下には本棚が連なり、四季を感じながら読書を楽しんでみたいと思わせる空間になっています。3つの棟にはテラスが有機的に設けられ、夫婦や来訪者が四季を楽しむ姿が目に浮かぶようであり、室内の計画も上手にまとめられています。

 
     
江口 海斗

「Meet New Friends」

静岡県立科学技術高等学校建築デザイン科3年
植松 那月

「Cultural exchange」

静岡県立科学技術高等学校建築デザイン科3年

講評

  矩形の平面形を波紋状の壁が切り取り各室を構成し、その中央は西と北に広がる自然公園へ至る通路となり、人々の出会いが生まれるという地域に開かれたところが魅力です。そこには大きなテーブルが置かれ、飲茶や食事を楽しむ近隣の人々や卒業生の賑やかなひとときが想像できます。建物から外に突き出した本棚は、晴れた日には古書市のような賑わいになるとされていますが、天候の急変にはどのように対応するのかが気になるところでした。

 

講評

 たくさんの蔵書を収蔵できる圧倒的な書棚が壁一面に設けられ、南面する窓は大きく開かれているので、天井が高く明るい室内は大きな図書館のようです。四隅に置かれた各室は数段高いところにあり、その下は収納や読書スペース、上には採光の取り入れ方を演出するなど、きめ細やかな配慮が見られます。さらに、これらの室にも書棚が設けられ、まさに本に囲まれた空間で構成されているところが高い評価となりました。

 


間 智子

「世界を読みに行こう」

名古屋市立工芸高等学校建築システム科3年

講評

 世界史を担当していた教師は大のエジプト好き。そこでコンテナのようなボックスをピラミッド状に積み上げ、そこに地域ごとの本を集めるという壮大な計画。1階は世界各地の本のエリアが点在し、広く地域に開放されています。2階は夫婦の生活空間と世界のハーブを栽培するテラスが広がり、3階が教師お気に入りのエジプトの本を楽しむ部屋。2階部分を全面的に床としたことから、1階通路部分が暗くなってしまうのが気がかりです。






奨励賞


三科 舞華

遊び心のある家」 

北海道北見工業高等学校建築科3年
五十嵐 照樹

Bookshelf 広場 
   〜匂いと笑い声が感じる家


北海道札幌工業高等学校建築科3年
  
上野 竜生

ファンタジーを愛する教師は
  レンガ造りのハニカムに住まう


北海道札幌工業高等学校建築科3年
工藤 侑紘

郷土を憂う 
  〜子供達に郷土の未来を託す〜


青森県立青森工業高等学校建築科3年
  
勝野 貴洋

晴耕雨読

青森県立青森工業高等学校建築科3年 
   福岡 秀郎

「気分を変えてハレとケの読書を楽しむ」

青森県立青森工業高等学校建築科3年
齋藤 将志

ゑにしの巡る家」 

埼玉県立熊谷工業高等学校建築科3年
三田 勇太郎

「Aromatherapie」

埼玉県立春日部工業高等学校建築科3年
福澤  啓

〜本に囲まれた家〜
         アスレチックハウス


神奈川県立神奈川工業高等学校建設科3年
斉藤 由姫

2人の隠れ家 〜夫婦の趣味の家〜

山梨県立甲府工業高等学校建築科2年
竹内 久美子

心伝造 〜風薫るおもてなし〜

静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科3年
 
   永野 将人

The cave of a book

静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科3年
池田 葉月

風の中でハーブが香り 
  水車と共に日本を楽しむ
」 

静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科2年
小澤 航介

昔・むかし・あるところに

静岡県立島田工業高等学校建築科3年
千葉 健寛

香りに誘われて

静岡県立富岳館高等学校総合学科3年
   山崎 翔太

読書好きの高校教師の家

兵庫県立龍野北高等学校
環境建設工学科3年
石原 寛也

本と自然に囲まれた部屋
 〜今すぐあの部屋で本を読みたい〜
」 

岡山県立岡山工業高等学校建築科3年
佐古 大樹

出会い 〜 Book with human 〜

岡山県立津山工業高等学校建築科3年
藤谷 佳菜

- F -

広島県立宮島工業高等学校建築科3年
   重永 雄喜

「近か道 寄り道 回り道」

宮崎県立小林秀峰高等学校
建築環境科3年














応募者一覧





道都大学美術学部建築学科

〒061-1196北海道北広島市中の沢149
TEL 011-372-3111
FAX 011-372-2580

http://www.dohto.ac.jp
E-mail:kitoh@dohto.ac.jp









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